長内歯科ホーム

豆知識

≡1≡ セカンドオピニオン

 患者さん本人の医療情報を得る過程で、診断を受けた医師とは別の医師に意見や診断、治療方針を求めること。「第二の診断」「第二の意見」と訳される。医療ミス防止のために、最近注目を集めている。

≡2≡ 流行の治療

レーザー治療*1やインプラント(人工歯根)*2そのほか、歯の漂白つまりホワイトニングなどあります。どれも保険外診療で、正否については歯科医によってそれぞれ考え方が違うので、マスコミの報道にとらわれず、納得のいく説明で同意してから受けるべきであろう。

*1レーザー治療
 当医院においては、現在普及している歯科業界でのレーザー機器が、今のところその有用性(コストパフォーマンス)において日常の診療では、あまり感じられないと言う理由から、導入は見送っております。
 しかし、より改良が進んで日常臨床で有効であるという判断が出来れば、知覚過敏処置に限って導入を検討したいと思っております。

 レーザーに関する私見としては、マスコミで話題になったことをきっかけに、メーカー側も販売を促進するようになりました。
メーカー側は「レーザーで、更に患者が増えますよ!」とか「先生の所はまだレーザーを入れてないんですか?」というし、患者さん側は「あそこの歯医者にはレーザーがあって、治療してもらったよ!」「テレビで、痛みが出ない虫歯治療が出来るって言ってたよ!」と言うことで、正直有用性よりも話題性が先に進んでしまっていると思います。

 従って、そういう流れに乗り遅れないようにと「レーザー」を導入する歯科医院が爆発的に増えてきました。これではマスコミやメーカーの思う壺です。よくそれをウリにしている医院も多いようですが、私にはとうてい理解できません。
 確かに広い範囲で使用可能となってきて、上手に利用して効果をあげている先生もいらっしゃることと思いますが、それらのほとんどがレーザー無しでも十分に行える診療行為ばかりなのです。ただし、私が唯一すごいと思うのは、「歯茎の黒ずみ」をレーザーで取るという治療ぐらいです。これはレーザーならではです。

 またレーザーには数種類あって、『歯茎や粘膜を対象としたレーザー』もあれば、歯のような『硬組織を対象としたレーザー』もありますが、実はそれぞれ別物です。一般に広く出回っているのは、比較的安価な前者が多く、実際に粘膜を対象とした治療と言うのは需要も少なく、症例もかなり限られます。ところが実際にマスコミで話題になったのは、後者の方で値段は二倍(高級車一台分)ほどします。それは、レーザーで「バチバチ」音を立てながら歯を削って、虫歯を除去するというもので、上手く使えば削る際の痛みがないこともあります。(ただし「上手く!」ですよ。)きっとマスコミでは「レーザー治療で痛みが無く歯の治療が出来る!」と言うような内容が多かったと思います。このレーザーを取り入れている医院は、ごく限られていますので、同じレーザーでも種類に違いがあることをご理解下さい。
 私のレーザーに対する期待はもっと、知覚過敏治療に抜群に有効なレーザーが出たら、いいなーって思っています。他には、使う必要もないと思っております。まだ歯科におけるレーザーは、皮膚科のように有効に利用されていないと思います。

 現時点で私なら、マスコミや業界の誤った方向での流れは無視し、仮にレーザー導入の設備投資をするくらいならば、「訪問診療器材一式」を揃える方を選択します。その方がずっと有用性があって、来院困難な患者さんやそのご家族に喜ばれると思うからです。(余談)

*2インプラント
=インプラントに対する私の個人的な意見=
結論から言わせていただきますと、否定的な考えを持っております。

  インプラントは「人工歯根」と言われることからも分かるように、顎の骨に金属を埋め込んで、それを土台として上に歯を入れるという治療で、歯を失った人にとっては、歯のないところに入れ歯以外で歯を入れて補う事が出来ることから「夢のような治療」として話題になっております。欧米では、もはや一般に広まっている治療で、近年日本でも広がりを拡大しつつあります。
  ではなぜ私は否定的なのでしょうか?それは、・・・
  1. 感染に弱く、手入れが自分の歯以上に大変だから。
      本を読むと、インプラントとは医学的な見地からは「尿道カテーテル」と同じような意味合いを持つものらしい。つまり細菌感染に対して非常に弱いと言うことなのだ。その上インプラントの場合、「カテーテル」のようにまめに交換しようと思ってもそうはいかない。ひたすら感染対策をしなくてはならないのである。自分の歯をほぼ完璧に磨けるような方には有効であろうが、そういう方は先ず歯を失っていないだろう。私の経験において、今までいろいろな方に歯ブラシの指導をしてきたが、この基準を満たす方は、3年間に10人もいませんでした。またそういう方からの要望もなく、得意の入れ歯処置でも十分に満足を得てくれていました。
    • 患者さんは、「サイボーグではない!まして実験台でもない!」
      骨の中に金属を埋め込み、更にそれが口腔内に露出しているようなものは、非人工的なものであると思われるから。僕自身体内に金属を埋め込まれるというような行為には耐えられません。
       CTによる画像診断や骨量の確認を行い、予後の衛生管理の保証があって、間違いなく適応症例と判断される場合には、実績のある先生のもとで行うのが正しい選択だと思います。

      インプラント1

      インプラント2


       しかも、歯周病治療でも実績のある先生の方が望ましいと思います。なぜならば、正しい診断と術式によりインプラントを行った場合、埋め込んだインプラント体周囲の汚れ管理が、主にその後の予後を左右する要因となり、これは歯周病治療における口腔衛生の高いレベルでの管理能力に類似していることが多いからです。



       現在は、「インプラント乱立」の時代です。誰でもキットを購入すれば植立できるようになってきました。取り組んで間もない先生は達は、実績を欲しがっています。そう「データ」が欲しいのです。データ収集のためのインプラント植立が行われているならば、私は許せません。患者さんは実験台ではないのですから・・・・・。

      • 適応が限られるから。また適応の可否の診断が難しいから。
          インプラントには十分な量の顎骨が必要である。それに全身的な要件や局所的な要件さらに衛生状態や定期的なメンテナンスなど、時には長年付き合った患者さんだからこそ分かる情報も多い。私は3年付き合った患者さんだからこそ、「この人なら要件を満たす」と判断できた(実際にインプラントはしていないが)。したがって、今から3年は「インプラントは絶対に行わない!」初診時に「インプラントをして欲しい」と言う依頼があっても「丁重にお断りさせていただきます」。ただしその理由はしっかりと説明させていただきます。逆に初診時から「インプラント」を勧めたりもしません。
      • 高額な治療費のわりに長期的な予後が、必ずしも良いとは限らないから。
          欧米ではかなり高い成功率があると言います。その理由は簡単です。「正しい診断」と「適応症の見分け」「衛生意識の国民性の違い」です。
          おそらく日本でもインプラントで成功している先生は、この辺の取り組みが優れているのだと思います。必ず上手くいく患者さんにのみ行う(症例を選ぶ)ことで成功率を高めているのです。
      • 天然歯牙との大きな違いがあるから。
          歯は、顎の骨に埋まっているが骨と直接結合はしていなく、咬んだときに歯にクッション(歯根膜繊維が歯と骨を結びつけている)が働くようなシステムになっている。しかしインプラントは骨と直接結合させるため、咬んだときのクッションが働かない。これでは必ずしも歯の代用とは言えない。咬みごたえも違えば、解剖学的な意味合いが天然の歯とは全く異なっている。当然強い「ブラキシズム」がある場合には、クッションがないので悲しい結果が待つばかりである。
      • 失敗の際の損失が大きいから。
          診断や、施術に問題がないとしても、失敗する理由のほとんどが、インプラント周囲に細菌感染が起こり、骨が痩せてしまう事で生じる「インプラント周囲炎」であるから、インプラント植立前にはなかった新たな病気を起こさせてしまうと同時に、以前よりも骨の量が減ってしまう。そうなってから入れ歯にすると、骨が痩せる前に入れた入れ歯よりも、条件が悪くなかなか安定が得られません。
      • 保険診療に「インプラント除去」と言う項目が定められている。
          これは何だろう?保険診療とはより多くの人に、一般的な医療を安価で施すことを可能としている。しかしインプラントを埋めるのは保険外なのに、除去は保険でカバーするとはどういうことだろうか?ちょっとひねくれた考えかも知れないが、それだけ要望が多いことなのだろうか?国としては、いつかダメになることを前提に、保険診療として定めているとしか思えない。そんな治療には個人的に賛成できない。
      • 現在は「歯の移植」という手段があります!
          これは自分の歯を一度抜いて、歯のないところに埋めるという治療です。適応症はインプラントより広く、インプラントのように人工歯根を埋め込むのではなく、あくまで自分の歯(歯根)を埋め込むので、将来的にも自分の歯として咬めるようになります。拒絶反応も起こらないでしょう。私は歯の本数に余裕があるのなら、こちらを絶対に選択します。インプラントよりももっと広まるべきだと思います。
★・・・と、インプラントに対しては、かなり否定的な私の見解ですが、自分自身の中ではすでに「慎重な適応症」が定まっています。そういう患者さんとの出会いや要望が多くなって初めて導入を考えることにしています。だって、長期的に成功しなければ意味がないのですから・・・・。

★根本的な考え方として、「出来るだけ自分の歯で過ごしていただきたい。」すでに歯を失ってしまったのなら、「残りの歯をいかに長持ちさせるかを共に考えていきたい。」と言うのが私の理念ですから、話題性ばかりが先行してしまってその予後が絶対的に保証されていないインプラントに過大な期待をすべきではないと思っております。


 インプラント治療に実績があって、数々の成功を収めている先生がこの文章を読んだら激怒するかも知れません。しかしこれはあくまでも私の私見であり、それを分かりやすく説明したに過ぎませんので、ご了承下さい。

画像診断に携わる歯学博士K氏のご意見

--日頃の画像診断から思う、インプラント治療の印象-- 《K歯学博士は某大学病院 放射線科にご勤務》

 近年、歯科用インプラントの普及が目ざましくなっている。長内院長と私が大学で学んでいたほんの7~8年前には考えられないほどの情報が世間一般にまで知れ渡る所となり、一般開業医においても日常的に施術されるものとなってきている。
 私は現在、大学病院において実際にインプラントの症例を数多く見てきている。また、大学において分子生物学的手法を用いて骨芽細胞(骨を造る細胞)などの細胞を用いた研究を行っている。そこで今回、大親友である長内院長の開院に寄せて大学病院における画像診断的見地から見たインプラント治療の現実を大学病院の一研究者の私見として簡単に述べさせていただきたいと思う。

 インプラントは言うまでもなく人工的材料である耐食性の高いチタンを人の顎骨内に埋め込む治療法である。これまで欧米を中心として様々な材料や方法を用いた数限り無い試行錯誤が繰り返され、現在のチタンという新材料に落ち着いてきた。試行錯誤が繰り返されてきた、ということはもちろんそれだけ失敗し、悲惨な結果を生んできたという歴史を物語っている。その上で、チタン表面に様々な工夫を施し、オッセオインテグレーション(チタンと骨の結合)の概念が認知されるようになってきた。

 長内院長が言われているように生体安定性の強いチタンといえども元々人が体の中にもっている組織ではない。この人工的材料はチタン表面に形成される酸化膜を介して組織親和性に関与し、インプラントと周囲組織との間の物質輸送や結合を担っていると考えられている。そして酸化膜が失われればその物性は著しく損なわれる。

 インプラント治療成功までの道のりの中で乗り越えなければいけないポイントはたくさんあるが、何よりも大切なことはまず主人公である患者様がインプラントを自分の歯の代わりとして機能させることができるのかどうかということであろう。
 現在、大学病院におけるインプラント精査目的のCT撮影の依頼は増加の一途を辿っている。そして私も数多くの画像を目の当たりにしながら時代の流れを敏感に感じ取っている。そして最も感じることはこの人にならインプラント治療を行っても大丈夫、と言える人がなかなか存在しないという現実である。もちろんそのままの状態でも打ち込むことができる症例もあるが、それは限られたものと言ってよいであろう。

 CT検査において、顎の骨は三次元的に画像上でとらえることができる。また骨の質も数値で分析することができる。通常のパノラマエックス線写真(ニ次元的に顎全体を診るための画像)ではインプラントを打ち込むのに十分な骨と質が兼ね備えられていると考えられる症例においても、CT画像上では実はインプラントの太さに耐えられない幅の狭い顎の骨であることが多々ある。さらにこれが実は最も危惧するべきことであるが、顎の骨の中に元々骨髄炎(骨の中の慢性的な炎症が存在、つまり細菌が顎の骨の中に巣をつくっている。)が存在しているケースが多い。やはり自分の歯を失っているということはもともと歯周病や虫歯によって顎の骨の中が正常ではない状態に陥っていることが多いのである。また、一度顎の骨の中に細菌が住み着いた場合、抗生物質を用いてもなかなか治癒させることは難しい。
 また、解剖学的にここに打ち込んではいけないという指標(下顎管、オトガイ孔、上顎洞、鼻腔底、切歯管など)までの距離を保てない場合も多い。この場合、GBR法(骨を特殊な膜を用いて造成する方法)などの骨造成法を用いて必要な骨の量を獲得できることもあるが、粘膜下に特殊な膜を埋め込むため、感染しやすく、喫煙や糖尿病、隣接した歯の歯周炎や根尖病巣(歯の根の先の膿の袋)があってはならない。

 ここまでお話すれば気付かれる方も多いと思われるが、要はインプラント治療を適切に行い、成功率を上げるにはまず全身的に良好な健康状態(もちろん心の健康を保つことも大切。)を維持していることが必要不可欠なのである。また、口の中の健康状態を自ら積極的に把握し、歯磨きを適切な方法で行い、通常の人以上に清潔に保っていることが大切なのである。この点からも長内院長が少なくとも3年間はインプラント治療を行わない、と言われていることに私は強く同調する。なぜなら、インプラント治療は歯科医師一人で成功させられるものではないからである。患者様のたゆまぬ努力と歯科医師の熱意が常に二人三脚で噛み合っていないとけして満足のいく結果とはならないと考えるからである。そのためには長内歯科新川診療所における長内院長と患者様の信頼関係を足掛かりとして、良好なお口の中を少なくとも3年間で作り上げていただきたい。

 長内院長は昔から人徳があり、責任感も強く、頼りになる男である。どんな悩みにも親身になって相談にのってくれる人物である。そしてはからずもインプラント治療が必要になったときにはお互いに納得して成功させていただきたい。

 インプラント治療はまだお口の中に歯が残っている時からすでに始まっているのである。スポーツにおいても入念な基礎トレーニングがあってこそ良好な成績となって表れる。このことを常に念頭に置きながら、長内院長と二人三脚で健康で快適なお口の中を作り上げていっていただきたいと強く願う次第である。(以上)


※貴重なご意見ありがとうございました。専門かつ学問的な裏付けに基づく上記のお話を頂いたことで、私の考え方にも自信がもてました。今後は、来院患者さんにとってインプラントが本当に正しい選択かどうかについてとことん話し合い、患者さんのQOL(生活の質)の向上に努められるよう努力いたします ので、ご期待下さい。

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長内歯科 新川診療所

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    診療時間:
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  • 金&土/9:30-12:30,14:00-17:00
  • 休診日:第一土・日&祝祭日,開院記念日(9月1日),年次有給日(要確認)